2章:次世代起業家にとって社会と共創して学習し続けられるPromising Industryとは(環境)

2章のキーワード

用語 意味
PBF 特に"社会と共創するマスタリー"を目指す起業家にとって望ましいとReapraが考える事業領域。具体的に述べると複雑性故にまだ規模としては小さいが、次世代に跨ぐ大きな社会課題を有しており、株式会社アプローチが有効で唯一無二のマーケットリーダを目指し得ると信じられる領域。
エントリビジネス 最初に取り掛かる事業のこと。ベースキャッシュフローの構築、次の事業への資金獲得、SO(4章キーワード集を参照)を体現した組織づくり、業界のビジネスインサイトの獲得を目的として行われる。
ワンプロダクトドリブン 1つのプロダクトにリソースを集中投下し、そのプロダクトの成長のために組織のあり方や会社の方向性を従属させ、短期間で急激に会社を成長させようとするやり方。プロダクトを中心に組織(会社)作りをしていくという考え方。
PF・PF企業 プラットフォームのこと。また、プラットフォーム企業(PF企業)とは、特定の顧客やデータを起点にネットワーク効果(繋がりが繋がりを産む状態)を発揮しながら複数事業を営んでいる会社であり、例としてAmazon、Google、エス・エム・エスが挙げられる。一方で、PF企業でない会社は1つのことに特化している会社であり、例としてワンプロダクトドリブンの会社が挙げられる。
ビジネスアナロジー・ビジネスインサイト アナロジー思考とメタマルチ思考(4章キーワード集を参照)を用いて、森羅万象を概念化し自らのビジネスと関連付けて活用すること。また、そうした行為から得られた知識や理論、気づきのこと。
ノックアウトファクター 自身のビジネスが立ち行かなくなるような要因のこと。例えば、強い競合、他業界からの参入、法律や政策の存在など。
次世代・超長期 5年や10年といった短い時間軸ではなく、数世代に渡る比較的長い時間軸のこと。
マーケットリーダー その市場の変化を牽引したり、進化を創造したりする企業のこと。それを実現するためには、当該市場において強く成長できる企業である必要があるため、利益率や規模でNo.1である必要がある。
陳腐なビジネスモデル すでに特段新規性があることをしなくとも、売り上げが立つことが証明されているビジネスのこと。全くイノベーティブでなく、既存で会社が存在していて、ユーザーの存在が確からしいビジネスモデルのこと。
ファーストビジネス(First Biz-dev期) エントリービジネスを立ち上げて、目的を達成するまでの一連の期間のこと。

はじめに

前章で、社会と共創するマスタリーを歩む起業家やその支援者が実施すべき学習とは「将来のなりたい姿に照らし、何か特定の到達したい物事に対して、再現性高く実行できる方法論を獲得すること」を指すと定義してきた。また、コラムにおいて、「Reapraが考える次世代産業創造」とは何かを説明した。

Reapraグループにおける起業家は、長期の時間軸を見通して、いずれ来る・いずれ来てほしいと考える社会像を市場(≒ビジネスの集合体)として結実させ、新たな産業創造にトライする存在だ。その営みは、市場や取巻く社会の変化を捉え有望な事業機会を見出し、そこに強い事業と組織を複数作っていき、新たな産業と呼べる経済圏を牽引する企業を徐々に創り上げていく。これは、領域の複雑性をできるだけ広く取り込んでいく学習だ。社会、市場、事業の作り込み、組織の作り込み、そして経営者としての振る舞いなど、それぞれの複雑性を段階的に広く取り込み、学習していくことに集中する必要がある。またReapraは、その継続的な学習によって、産業創造に近づく再現性の高いアプローチを標榜している。
 ※ここでいう再現性には、当該経営者による自社経営人材の育成ニュアンスが多分に入っている。

産業創造においては、長期的に学習し続けることが必要不可欠である。時間軸と共に外部環境である社会が変化していくため、起業家自身も、環境にあわせて自身の考えや行動を変化させていく必要があるからだ。 仮に、各種環境変数をロック(固定化)でき、静的に市場環境を捉えられるなら、そこで見定めたサービスや事業戦略だけで一気に成長できると考えられる。だが、そんなことはあり得ないだろう。一時期の大きなインパクト創出を目指し、スナップショット的に企業価値の大きさを目指すのではなく、長期的にインパクトが積みあがり続けるため、時間軸を長くすることでインパクトの総和が大きくなっていくことを重要であるとあなたが思うなら、上記の学習は必須項目と呼べるだろう。

では、次世代起業家が、産業創造というテーマ(将来のなりたい姿・特定の到達したい物事)で、社会と共創して学習しつづけやすい環境とは、どんなものだろうか? 長期的な将来の理想像を明らかにすることで、現状のギャップを可視化し、試行錯誤を通して勝ちパターンを作りながら、As-Is - To-Beギャップを埋めていくことを繰り返し学習していくわけだが、その際、短期的に雌雄が決まる市場状況、競合によるマーケットの侵食、短期的な資金枯渇の問題やステークホルダーからの資金回収プレッシャーなどがあると、学習の基盤が出来上がる前にいきなり学習に集中できなくなってしまう。逆に、先行事例が少なく成功イメージが持ち難いという難点はあるものの、競合が少ない環境で、継続的に営業利益が上がるため時間軸を踏まえながら組織や事業の成長を思案でき、業界のインサイダーとして事業活動を通じて市場インサイトを溜めながらオペレーションを磨き込める状況だとどうだろうか。経営者として自分がどのように事業を作り込むか?の一歩目の学習に集中しやすくはないだろうか。 このように、マーケットの特性として、起業家が「学習に集中しやすいマーケット」と「学習に集中しにくいマーケット」があるとReapraは考えている。「学習に集中できなくなる要因」を排除し、起業家が学習し続けることで産業創造が結実されやすい市場を選定するための諸条件をまとめ、様々な外部環境が変化する中、その市場を再現性高く見つけ続けるために(概念として作り込むために)、Reapraでは長期熟達アプローチで産業創造にたどり着きやすい特性を持ったマーケットをPBF(Promising Business Field)と名付けた。

では、PBFにはどのような特徴があるのだろうか? 大まかに理解するなら、下記3点を包含した概念だと理解しておいていただきたい。

(1) 起業家自身の独自の切り口で整理した社会の課題認識(課題:理想状態と現状のギャップ)のうち、
(2) 複雑性が故に、現状ではまだ社会からの要求は小さいが、次世代に跨いだ大きな社会課題で、
(3) 当該領域において唯一無二のマーケットリーダーを目指し得ると信じられる領域

2-1:PBFとは

PBFの詳細定義

PBF(Promising Business Field)とは、Reapraが、特に”社会と共創するマスタリー”を目指し、長期熟達アプローチで産業創造を目指す起業家にとって望ましい事業領域を総称した言葉である。 PBFという言葉そのものにはあまり意味はない。ただし個別の言葉をつけることで、多義的な概念を総称し、客観的に当該概念を作り込んでいくことが可能になる。故に、PBFという名称の概念、を作ることには大きな意味がある。だからこれが正解ではなく、試行錯誤している途上概念のため、ぜひ建設的な批判的精神で見ていただきたい。 既に企業経営に熟達していたり、特定の事業領域に深い知見があったりするわけではない新参の起業家が0からマーケットリーダーを目指すためには、熟達し続けることが勝ちにつながるような領域を選びとることと、そこでの登り方を理解する必要があると考えている。

どんな概念も実践できないと意味がない。ここからより詳細な定義を見ていこう。Reapraでは、PBFを以下のように定義している。
※表画像は1版以降に差し替え予定(株式会社アプローチが有効で~は削除予定)

さらに定義を分解すると、PBFには以下のような6つの条件があることが分かる。
※表画像は1版以降に差し替え予定

本節ではこれらPBFの諸条件について、その内容、及び背景や理由について、ケースを交えながら説明していく。

PBFは唯一絶対解?

大前提として、全てのスタートアップや、独立を志向される方にとってすべからく有効なアプローチ(一般化された定式)、というものは現実的に存在しないと考えている。 勿論切り取り方によっては、全てのスタートアップに資する理論を打ち立てるのは可能だ。例えば、少ないリソースでもできる事業から始めよう、とかだ。しかし、一般的すぎて、敢えて定式化する必要もない粒度になってしまう。実践できない、実践するまでもない、そういった粒度では紡ぐ必要がないため、Reapraでは敢えて、対象とする起業家、市場環境の特性、時間軸、などの条件を細かく定め、かなり細い線かもしれないが、まずは、ここに合致する限定的な条件下で活用できる理論の開発を試みている。

そのため、当然、起業に際する動機、目指す世界観、時間軸いずれも十人十色。そこで選択するアプローチに優劣はなく、あるのは相性の良し悪しぐらいである。PBFアプローチは、長期持続的に社会と共創し続けることで、社会へのインパクトを出し続けようと志向する起業家にのみ、有用なアプローチ仮説として定義している。これを念頭に置いて読んでいただきたい。

<参考:PBF簡易説明表>

簡易に把握されたい方は下記の表を参照いただきたい。
※ただ表画像は1版以降に差し替え予定(全体的に修正予定)

「起業家自身の独自の切り口で整理した課題認識」について

PBFを考えるにあたり、起業家自身が社会をどう捉え、次世代にどう変化すると考えているのか、独自の切り口を持つことが重要だ。 一見バラバラに見えているものも、ある視点から一本の筋を通すことで、関連するひとつながりの事象として説明できることがあり、それが見つかるとすっきり整理・理解できる。そんな経験がないだろうか。 独自の切り口とは、そんな整理軸のうち「この切り口で見たことないけれど、言われてみると確かにやっている人がいないね」という、世界の見方が変わる視点とも言えるだろう。 「世の中の見え方が主観で変わる。自分たちが事実だと思っているものが、実は解釈でしかなかった」という実体験がないとイメージしにくいかもしれないが、 そのような独自の視点がPBFの出発点になる。

Reapra代表の諸藤が立ち上げた、エス・エム・エス社(以下 エス・エム・エス)を例に見てみよう。
エス・エム・エスでは自社を「高齢社会の情報インフラを作る会社」と定義していた。
2000年以降、高齢社会と情報インフラ(=インターネットによる情報流通)の両方が進展するにつれ、基本的に増加する高齢者に対する情報流通がオープンかつフラットになるトレンドがあるだろうという見立てがあった。しかし、その変化の過渡期においては、各所で断片的に個別最適化された(フラグメントな)マーケットが成立する。その結果、情報の非対称が増え、不便になったり、非効率になったりするだろうという見通しがあった。それらを踏まえて、「高齢社会において、情報の非対称を無くすインフラを構築し、マーケットを作ったら大きくなるはず」という独自の切り口を見出し、徐々にその解像度を上げていった。

この切り口でみると、エス・エム・エスには主だった競合はいない。
もちろん、サービスや単体の事業単位で見れば、老人介護事業者や看護師の人材紹介サービス事業者など競合は多数いる。しかし「高齢社会における情報インフラ」という観点で市場を捉えているプレイヤーはいない。あえていうと、情報のプラットフォーマーとしてGoogleらが存在している。しかしグローバル企業である同社が「急速な高齢化」という日本のローカルニーズにあてて入ってこないだろうという予測も立てていた。このように、独自の切り口で社会課題を定義し、事業ポートフォリオ全体として競合がいない領域を見定めて同じ土俵で戦わずして勝つ。特に競合が類似ビジョンを掲げて、後発で入ってきたとしても負けないような構造を先んじて作り上げるのが、Reapraの長期熟達アプローチにおける戦略の根幹になる。

※参考資料:エス・エム・エスの一橋大学主催 ポーター賞 応募に関連する資料群(第1版後にURL挿入予定)

とはいえ事業機会としての魅力で紡ぎだしただけだと、いろいろな経営課題に直面するなかで、起業家は長期的な学習をやめたくなってしまう可能性がある。 そこで、起業家自身がその領域・その切り口で学習しつづけたい理由・しつづけなけれなならない理由を、確認しておく必要がある。 IFDとPBFをつなげる重要性がそこにある。(第3章で後述)

自身の囚われ、エナジーソース、ミッションなどに照らして、この領域でやり続ける理由があるのか。なぜ自らが、マーケットをそう見ているのか?逆に独自の切り口は、自らのバイアスによって、独善的なものになっていないか?必要以上に社会が変化していくシナリオに願望が入っていないだろうか?
多面的に内省を繰り返し、自分自身を駆動するエネルギーを理解した上で、自らの自我重心で見ているものをOut of the box thinkingさせながら市場を再定義しにいくことが、PBFをつむぎ出す営みとも言い換えられる。そうして紡ぎだした領域に、最後に、学習に集中できなくなる要因がないか?丁寧に確認していく。

そういう意味では、特定領域での産業創造をテーマに、社会と共創するマスタリーとして熟達する起業家向けに、「望ましい領域を紡ぎだすための観点を統合した概念=PBF」と言えよう。

大前提とも言える、独実の切り口に関する重要な観点を理解いただいた所で、定義の詳細を見ていこう。

a.複雑性が故にまだ足元ではまだ小さい

「複雑性が故に~小さい」とは何か

ここでも大前提として、そもそも世の中は複雑であることをご理解いただきたい。
複数の独立した変数の相互作用によって、予想し得ない結果が生み出されることが複雑性の根幹だ。例えば、屋外の煙草の煙がどこに立ち上っていくのか?を全ての影響変数を捉え、その変数間の相互作用を見出して完璧に予測することは難しい。既に世の中では、数多の物理法則が発見されているため、完璧に予測できそうなものだが、特定の条件を排除した上でならいざ知らず、自然界においてそれらを支配する法則と、さらにその相互作用まで網羅しきるというのは難しい話であろう。(そこまでして証明する必要がそもそもあるのか?という問いかけは一旦忘れよう。)

改めて定義に戻ろう。「複雑性が故に~小さい」とは、全体最適化された際の市場規模(≒同一の市場ニーズ)は大きいが、関与変数の多さによって最適化への道のりがまだ見えない。そのため、現状で単一の解決策で獲得できる市場サイズが、全体最適化できたとした後に想定される規模より相対的に小さい。特に小さいことの理由が、関与変数(ステークホルダーや制度の煩雑さ、歴史の長さetc)の多さという状態を指す。ただし、賢明な読者であれば、世の中は複雑だから、全てに当てはまるのではないか?と疑問に思うだろう。なお、その通りである。
そのため(PBFを独自の切り口で観ていることが重要なのだが)、ある種、敢えて複雑に切り取った方がいい、と捉えていただいても差し支えない。本来的な状態(≒起業家が想定する将来的に理想的な社会状態)にならない原因として、歴史的経緯、関与者の多種多様さ、故に商流の多層化など複雑にいりくんだ現状が存在していると捉えていたとしたら、それを「複雑性が故に~小さい」と呼べる。

また、ここでさらに重要なのは時間軸による変化を見ること、時間軸と共にその範囲が拡大することを意識することである。単に現状関与する変数が多いだけではなく、それらが相互に関連しあって時間とともに関与変数が変化していく(動的)ことを考慮してほしい。

なお逆説的ではあるが、この特徴を備えた領域の見極め方として、以下のような観点を活用する。

  • 小規模な事業者が多数存在している
  • 断片的な市場が形成されている。(例:物理的に地域ごとに商圏が分断されている)
  • 商流が多層的に分断されている / バリューチェーン上、エンド2エンドで考えた際に仲介などの取引回数が多い
  • 情報の非対称性が多数生じており、最終受益者にしわ寄せがいっている。非効率な取引構造が残存している
  • 必要資格や規制が多く、外側から見るとグラウンドルールが見え難い
  • 情報開示があまりされておらず、市場全体に透明性が低い(故に、本来は効率よく再構成されるはずが、多数の関与者の意向により様々な非効率が残存している可能性が高い) etc
     ※第一版以降に表化して挿絵として挿入予定

「足元ではまだ小さい」

既に半分述べてしまっているが、現状領域を見渡した時に、単一の解決策(≒サービス)で獲得できる市場サイズが、全体最適化できたとして獲得できる市場サイズより相対的に小さい。ということだ。 まだ小さい上に、ある種現状の小さい構造は、各関与者が歴史的経緯も踏まえて最も都合がいい構造だ、とも捉えられる。 そのため、既存プレイヤーには基本的に全体最適化させるインセンティブは低く、外から見て、簡単に全体最適な構造を捉えられるものでもない。そもそも複雑に絡んだ変数によってそうなっているため、余計に難しい。
さらに、関与者が多い場合、その利害調整に時間がかかり、だれか特定のステークホルダーが意見を表明した所で一気にその地平線が変わるものではない。(黎明期の新テクノロジーの影響が大きい領域では、特定の大資本やトップ専門家の動向で大きくルールは変わり得る)緩やかに、徐々に変わっていくのである。その変わっていった先と比べて、現状では結実している市場(単一サービスで解決できるニーズの商圏)が相対的に小さい。

仮に「既に十分に大きい」だった場合はどうなるだろうか。最適化までのシナリオが見通しやすいのなら、資本体力を持ったプレイヤーがこぞって、当該市場を獲りにくるだろう。またその過程で既に成長している先行者が十二分に強く大きく、例えば新規参入者に対し足下の利益度外視で価格勝負に持ち込み、潰しにくることも考えられるだろう。故に、逆説的ではあるが、0から参入を検討する際に、既に十分に大きい市場は狙わない方が賢明と言えるだろう。

b. 次世代に跨ぐ(世代を超える)

複雑性の高さから、緩やかにしか変化していかないことから、理想状態(一定効率化された社会)にたどりつくのに、数十年の時間がかかるため次の世代に時間軸としてかかること。また、大きな流れを指しており、次世代に渡っていったとしても、おそらく社会から求められ続けるであろう、ものである。(厳密な長期的社会予想はしえないし、不要である。) 独善的な妄想ではなく、社会からの要請を踏まえた上で、長期的に求められ続けるだろうと予想がたつものである。
ここでも逆説的ではあるが、そのぐらい長い時間がかかって徐々に最適化や解消に向かうような大きな課題を見定めると、結果的に複雑性が高いことが多い。(一因子の変化や単一のステークホルダーの意思決定だけではどうにもならない。)

c. 大きな社会課題

c-1. 「社会課題」とは

社会における理想的な状態と現状とのギャップである。
なお、社会における理想的な状態に精緻な未来予測は必要なく、起業家自身が「こうなってほしい」と強く信じられるもので構わない。ただし独善的な妄想ではなく、例えば人口動態やテクノロジーライフサイクル、気候変動、各種社会問題だと既存で定義されているもの等を踏まえた上で、社会から要請されている流れに合致している必要がある。

ただし、では社会課題を考えよう、と構えないでほしい。起業家自身が社会を見渡した時に、「不便なのでこう変わったほうがいいんじゃないか」「明らかに非効率だ」「ソリューションは見えないが、明らかな負というか課題感が一部見える」「類似市場では解決済みで、既に当たり前になっているレベル感から非効率な状態が残っている」など、世の中に広く目を向けて、もっとできるはずなのに止まってしまっている社会を見つけるだけでいい。
また、高尚なものである必要は全くない。社会善なる物を実行するのではなく、それで起業家自身が思う、よくなった社会を想像するだけでいいのだ。動物的な欲求から見つけてもいいだろう。 「未来にどんな社会を見ていたいか?」という捉え方で、自らが思う領域を再定義すればいいのだ。

c-2. 『大きな』とは 

よくある質問として、どのくらい大きいマーケットを見ないといけないか?という質問がある。
これに対しては、以下2つのポイントに留意いただきたい。

  1. 現在ではなく将来のマーケットサイズに注目する
  2. 正確に分からなくても曖昧さを受容する
    Reapraの投資事業としてのポリシーは、10年で企業価値が1000億(円)を超えるサイズ感の会社を0から作るというものだ。
    将来これを満たすようなマーケットサイズであると見立てて信じ込める大きさであれば良い。

これを満たすためには、以下のような数字がスクリーニングの目安となる。

10年後に自らが牽引する市場でトップシェア(20-30%)をとっていると考えた際に、

  • トップライン200~300億円作れそうか?
  • 純利益50億円作れそうか?
    ※コンサバにPER20倍と見た前提に立っている。
     継続して成長する企業が長期に伸びる市場で20-30年と長期視点でやっていれば本来もっとアグレッシブに期待値を見てもいいが、あくまでポテンシャルの思考実験のためコンサバに設定している。
     また必ずしも国内市場だけではなく、東南アジアと日本を跨いだスケールで領域の拡張性を見た際に、このくらいのサイズ感がありそう、と確認が取れれば足りる。

ただし留意いただきたいのは、あくまでも現時点で仮説を立てられている領域でマーケットリーダーを目指すこと。ユニークに定義した市場を結実していく存在になることである点だ。
そのためサイズが足りない、足りる、という0か1か議論そのものにはあまり意味がない。マーケットリーダー企業となる頃にはまた次なる展開や市場の拡張性を感じているはずだ。自らが実現したい新産業のサイズ感やポテンシャルを確認する1つの指標ぐらいに思ってもらえれば十分である。

d. 株式会社アプローチが有効

『株式会社アプローチ』とは 世の中には様々な社会課題が存在するが、その全てに対して株式会社という手段を用いることが最も有効である訳ではなく、行政やNPOがアプローチした方が明らかに良いケースがある。(例:市場の失敗、外部不経済)Reapraではあくまでも株式会社アプローチが適した領域であると見立てられ、信じ込める領域をPBFとして扱っている。

※dについては、コラム『Reapraが考える産業創造とは』で詳細記述しているため、参照いただきたい。

e. 唯一無二のマーケットリーダー

e-1. 『唯一無二』とは

農業、水産業、建設業など、既存産業の定義に拘らず、社会変化と自らが描く理想的な状態を組み合わせて、「高齢化社会における情報インフラ」など独自像をしっかりと言語化することである。
自分なりの産業像が緩かったり未定義の部分があると(未定義に自覚的であれば良いが)、いくつかのホラーストーリーがあり得る。社会トレンド(複数の他者がアナウンスする社会変化予測)に確証を求めて追随したくなったり、漠然としか領域を考えていないため「その未来はほんとうに来るのか?」と不安になり試行錯誤に集中できななったりすることがある。また、ステークホルダーと経営者の自組織への期待値ズレが慢性的に発生する。その結果、市場の捉え方が組織内外問わず他者に根本的に伝わらず、市場の解像度を上げる情報収集が上手くいかなかったり、時に組織への求心力の低下して組織崩壊につながる。あくまで独自の切り口ではあるが、解がないからとおざなりに放置せず、言葉の1つ1つを吟味して一旦考え尽くしておいていただきたい。

e-2. 『マーケットリーダー』とは

PBFアプローチで目指すのは、ユニークに定義している市場を結実し、牽引しているリーダー企業になることである。それをマーケットリーダーと呼んでいる。

リーダー企業になることは重要であるが、短期的に市場占有率でNo1を狙う必要がないことに留意したい。
一般的に業界のNo1企業の方が、より高い利益率で潤沢な投資予算があり、人材を集めやすいなど良いポジションであることが多い(当たり前かつ結果論ではあるが) 長期的に結実していく新市場において、結果的にNo1カンパニーを作る上で重要だとReapraが考えているのは利益率だ。シェアなどの規模を追うKPIは、マーケティング予算や組織規模の多寡に依存しやすく、外部からのリソース調達と相関して追いやすい指標だ。故に、長期持続的であるためにも、自律的に成長するオペレーションレベルが高い組織を作ろうとする動きとバッティングする要素がある。無論、昨今期待が集まるSaaSビジネスのように、導入顧客数を積み上げて規模を達成してからマネタイズしにいくやり方もあるし、正攻法の1つである。しかしこのような観点を踏まえて、Reapraでは敢えて規模の成長指標ではなく、あくまで利益率の高い状態を目指してほしいと考えている。利益率が競合対比で高く、またそれを再現性高く作れるナレッジを持った組織であれば、規模を持ったプレイヤーが多少利益度外視の締め出し施策などを仕掛けてきたとしても(相手の組織・資本体力次第ではあるが)いずれ限界がやってくるため、市場占有率でも逆転できるだろう。

当然の話だが相対する市場によって構造とそれが作られてきた歴史が異なるため、アプローチ仮説を1つ2つの得意なパターンで認識してしまうことには注意が必要だ。

例えば、市場が複雑な状態のままとどまっていることに構造的な理由がある場合だ。
特定の商流やマーケットに統合される必然性がないか、それを阻みたいステークホルダーが存在している領域に関しては注意する必要がある。 IT業界などにいる場合、効率化や全体最適は、「≒正しい」とされることが多いものの、個別最適化された現在の形を維持したい勢力がいる場合や、 それが法律・これまでの商慣習で保護されている場合、その再統合や最適化の道のりは遠く、必ずしも効率化に対して好意的とは限らない。

また一定レガシーな旧態依然とした業界に多いが、効率的なプラットフォームの絵図が描きやすい市場には特に注意が必要だ。
確かにそういった市場は、若くて最新の知見をとりいれていこうという、変革志向のある人材が少ないため、非効率が眠っていることが多い。
ただしそう単純な話だろうか。効率化されていないことには、それなりの理由があるものだ。
コンサルティング会社出身者など、俯瞰した視点と構造的に物事を思考することが得意な起業検討者が、そういった統合的な構造を見つけると、望ましいと判断して勝負したくなる傾向がある。しかし、もし容易に見通せるのならば(事業を始めてもいない段階で構想できるレベルならば)資本体力のある大手企業や、既に参入している企業、同業界の経験を踏まえて再挑戦するシリアルアントレプレナーが目指しやすく、分が悪い可能性が高いのではないだろうか。
無論、故にそういった市場はNGだ、と伝えたい訳ではない。そういった市場の場合、特に注意して現在の構造が生まれてきた背景や「誰にとって都合がいい構造か?」を見にいってほしいと考えている。

逆にあまりに見通せないものはどうだろうか。
複雑かつ新規性も高い領域(ReapraがΩ領域と呼ぶ。例:今後人間の可能性を拓く脳科学とその関連市場 など)においては、市場の形すら曖昧なため最終的にどのような形でマーケットリーダーになることができるのか見通すことは難しい。しかし、初期フェーズでマーケットリーダーになれるのかを過度に疑問視する必要はない。
このような市場では、いち早くオピニオンリーダーになろうと、協議会や業界団体のようなものを立ち上げたり、「〇〇業界を作る」とメディアでの露出を目指すアプローチをとる起業家もいる。このような動きにはキャッチアップしておいた方がいいものの、必要以上に焦る必要はない。そもそも事業のシェアやオペレーションの強さで勝負するのであって、人材と資金を集めるのに知名度で勝負する訳ではないからだ。このような施策は有用だが、複雑性が高い市場の場合、まずは足腰のCFを立ててからやらないと周囲の期待値から急な変化を強いられたり、CEOが外部対応に追われてしまい、本来注力すべき組織や事業の足腰を強化する部分に稼働を割き難くなる副作用が生じやすい。外部に打ち出し募った期待値と現実のスピード感のギャップを埋めようと、短期的に必要なリソースを外部から調達しようとしてしまうこともある。
しかし冷静にフェーズを見極めて対応してほしい。急いで理想形の市場を無理に作りに行こうとするのは結構だが、そもそもあまり見通せない新規性の高い場合は、ニーズがないか乏しく事業が成立しないリスクが高い。そのため、関連する市場の中で、既に顕在化しているニーズを捉えて事業を展開しながら、徐々に当該市場が成立していく様をフォローしていくだけでいいはずだ。

故に、いずれにしても見定めている領域全体は大きくとも、単一サービスが入る1つ1つのマーケットが小さいからこそ、1個1個のビジネスで利益率を追い、競合を寄せ付けないような強いオペレーションができている状態を目指すのが、PBFアプローチにおける戦い方の基本となる。

f. 目指し得ると信じられる

もう少し強気に、目指せる、と言い切りたいものだが、勿論そう単純に言えるものではない。
ここでは、「双方が」目指し得る、と信じられることに意味がある。

まず起業家が目指し得る、ということだが、領域を選ぶ際にPBFの条件を満たすことに加えて、その領域を興していくことに(PBFは次世代に結実させたい領域像のため、基本的に現時点ではまだ存在していない)起業家自身が「こだわりがある」必要がある。意識的にReapraのFD(Foundation Design)のようなアプローチをとらない場合、それは日々の葛藤や不安からくる自問自答(本当にこの領域は伸びるのか?この未来はくるのか?事業は成長し得るのか?)から徐々に明らかになっていくものだと思うが、特に創業前や起業初期は無自覚だろう。できる限り自分自身の「こだわり≒らしさ」を創業前に言語化し、どんな主観的な理由で10から20年、当該領域の結実に熱意を持って打ち込み続けられるのか?逆にどんな状況になったらその熱は冷めてしまうのか?その理由をできる限り言語化し、自覚しておくことが重要である。その過程で、特に何に自らは「こだわり」、強い好奇心を持って向き合い続けられるのか、その輪郭が明らかになっていくはずだ。

また、そのユニークな市場の見方が自分自身のどのようなバイアスからきているのか?を知ることで冷静に市場変化を捉えられるし、今後の変化を予測した根拠に自覚的になれると、より構造的に目の前で起きている事象や変化を理解できる。また組織化した際にPBFという、ある種既存市場とは異なるユニークな独自概念を追うことが、妥当な未来図・戦略だとメンバーに理解してもらう必要がある。論理的に説得性を持って論じることは可能だろうが、やはり組織の求心力や思考錯誤の過程に組織を惹きつけられるのは起業家の熱量だ。自分自身がその所在に無自覚で、その熱量が浮沈するような状態では徐々に求心力を失ってしまったり、組織に対してその未来の世界観とその魅力を伝えられないだろう。

なお「信じる力≒信じ力」を侮ってはいけない。他者を巻き込む度に、起業家の双肩にのしかかり続ける責任や期待。PBFへの信じ込みがゆらぐ要素や機会、自分自身の小ささを何度実感することだろう。01からの日々には非常に沢山の落とし穴が存在する。"N=1"なんだと頭では分かっていても、あくまで個別性の高い反応だと理解していても、目の前の顧客や業界関係者が価値を理解してくれなかったり、批判的・否定的な話をしてくることの方が圧倒的に多い。それをあくまで"仮説検証"の過程なんだと信じられる拠り所は、自分自身の「信じ力」に他ならない。
ビジョンを検討しても答えなんで出ない?所詮ただの言葉や概念?すぐに役に立たない?行動した方が色々なことが見える?
そんなことは分かっている。でも、自分が強く信じられるまでPBFについて、徹底的に考え抜き、日々の行動を批判的に振り返りながら磨き上げていってほしい。信じ抜ける力は本当に重要だ。

では逆にReapraが目指し得る必要があるのはなぜだろうか。
勿論、共同で事業を作っていくのなら当然、という見方もあるが、それだけではない。上記の起業家が思い描く未来像が独善的に陥ることを防ぐためだ。
PBFは多分に概念的であるが故に、どうしても独善的な様相をはらんでしまう。故に、俯瞰的に様々な市場・企業のケースを見ているReapraと説得的な対話をすることを通して、疑似的ではあるが、本当に社会から求められ得るのか?という観点からアセスメントされる。次世代に渡って社会の課題であり続けるものか?社会から重要視され続けるのか?を取り入れる意味で双方が信じ得ることが必要だ。

なぜ世代を超えるテーマを選ぶのか

実際のところ、多くのビジネスの現場では意図して長期的なテーマを選んでいない。
当たり前であるが、ほとんどのリスクマネー・ファンドは投資家にリターンを約束しないといけない構造上、期間限定でお金を扱う。期間が延びれば伸びるほどリスクが増大するためだ。短期のゴールを目指し、起業家が持っているコンプレックスなどをエネルギー源としてレバレッジさせる方法は、資本主義の中でショートタームを前提に沢山の結果を生み出してきている。
では、なぜReapraは資本主義のグラウンドルールとも言えるアプローチに逆行し、世代を超えるテーマを選ぶのだろうか?

Reapraは、社会と共創する熟達の基本概念とは別に、以下の3つの理由からも、敢えて世代を超えるようなテーマが望ましいと考えている。

1.複雑性が高い
既に説明した通りだが、逆説的なアプローチとはいえ、世代を超えてでも残り続けるであろう社会の課題は当然に複雑性が高い。

2.01フェーズから人材育成の観点を入れた組織作りを行い、事業の再現性を高める
敢えて「次世代に跨ぐ」を意識するかどうかで経営者の行動は大きく異なるだろう。世代を超えるためには、自分ではない人に継承していくことが必要不可欠だからだ。しかしそのためには、かなり長期で意図的な取り組みを要する。(一般的には、経営者の後継者育成には6年はかかるとされている)
とはいえ、スタートアップ的発想の追い風もあり、01フェーズにまず急成長を遂げようと躍起になると、短期的なゴール達成を駆け抜けるために、機能補完的に完成度の高い(既に必要な能力のある)人材を巻き込み、プロジェクトチームを組成するように組織を作り上げていく。短期的に組織が成長するため、また次の必要な機能を補完していく。ただし良い人材を採用し続けられる難易度は非常に高いため、早いタイミングで分業に移行し、規模が大きくなりやすい。その結果、組織の成長に対して追い付かない人材が徐々に離れていく。この構造の場合、時間を優先させるために外部から「できる人」を採ってくることに最適化され、人材育成の観点がどうしても弱くなってしまう。カルチャーが出来上がった組織を後から軌道修正することは痛みも伴い容易ではないため、01のフェーズから後継者や自分から属人性を失わせることを企図してもらうためにも、敢えて、世代を超えるテーマを意識していただきたい。

3.Reapraのユニークさ
通常のリスクマネー提供者であるファンドの場合、投資家にリターンを約束しファンドレイズする必要があるためどうしても期間制約がかかってしまう。もちろんパフォーマンスを上げ続け、徐々に預けてもらえる期間を長くすることは可能だが、PBFアプローチの仮説検証を行い始めるにも非常に時間がかかってしまう。また昨今01フェーズに投資をしていくファンドプレイヤーも増えているため、敢えて同じ土俵で新設した場合、社会的なインパクトも乏しいと考えた。そのため個人の時間的な制約の少ない財産を元に、敢えて最初からロングタームを見定めて産業創造することを検証できるという構造のユニークさを元に、敢えて世代を超えるテーマに特化して試行錯誤を行っている。

PBFのグラデ―ション (α→β→Ω)

Reapraでは概念的なPBFをより直観的にも理解すべくαβΩの3つの段階に分類する試みを行っている。βとΩの特性を持つ領域が「複雑性が高い」≒PBFであると定義している。
αβΩは、複雑性、時間、課題の顕在度という三つの変数によって以下のように分類できる。なお、これはあくまでもグラデーションである、自身の領域への見立ての重心をβΩに置いて見やすくするための整理である。

α領域:複雑性-小 / 時間-短 / 課題-顕在  1つのプロダクトで突き抜けるモデル相性がよい。

β領域:複雑性/時間/顕在度-いずれも中間  非効率/課題は一定明らか。商習慣のしがらみ等、複雑性があるため全体最適化をはかっていく難易度が高い。分断しているため1つ1つの市場サイズは小さい。  他市場との対比などから構造を見極めていくため、ビジネスアナロジーの存在が非常に重要。

Ω領域:複雑性ー大 / 時間-長 / 課題-潜在  どのような市場が構成されるか誰に分からない、最もカオスで新規性の高い領域

※挿絵は第1版以降に差替え予定

01起業家を取り囲む競争環境と学習との相性の観点

PBFアプローチで領域を決めていく際に、社会と共創するマスタリーを01からの産業創造をテーマに取り組む起業家にとって、学習しやすい競争環境を捉える意図で3つのポイントがある。

1. 構造整理が難しく、資本効率が悪く見えることから、大きな資本プレイヤーが入ってき難い

業界課題の背景構造が分かりやすく、勝ち筋が見えやすい領域や、事業の成長予測が成立しやすい領域であるほど資本を持ったプレイヤーは参入しやすい。ヒトモノカネのリソースに欠ける起業家は、このような勝つ必然のない大きいマーケットではなく、複雑であるがゆえに小さい領域に取り組むことが重要だ。自らの学習行動の結果、市場が結実するように見えてきたことで、後から大きなプレイヤーが入ってきたとしても、その時までに参入障壁を築けているはずだ。

2. トレンディで苛烈な競合環境でない

変革思考が強い若手の優秀な人材や、熟達している起業家や経営者が相対的に入ってきにくい領域が望ましいだろう。要は混みあっていない、ところを狙うのだ。 混みあっていないため、周辺のプレイヤーが資金調達を繰り返し、短期的な市場の奪い合いを挑んでくることが少なく「煽り」が少ない。初期には、当該領域を深く知っていたり、信じている起業家以外の人からは、PBFアプローチで再定義した次世代の領域は適切に評価され得ない。ゆえに安易に新規性あるアイデアをベースにコミュニケーションを行い、周囲からの期待値を上げてファイナンスレバーをひいてしまうと、本来的に得られると仮説だてている価値よりも、相対的に小さい価値でリソース獲得することになってしまう。しかし周囲の競争に「煽られる」と、自ずとそのような選択を取らざるを得なくなることもある。そのため、敢えてトレンドマネーが集まっていない、混みあっていない所に目を向けてほしい。
PBFアプローチの強みは、時間軸を踏まえて既存プレイヤーと異なる市場の捉えなおしを行うことだ。故に、変革志向のプレイヤーが集まり難い所で積み上げておくと、彼等がこの領域の可能性に気づくころ、あなたは強い基盤を有しているから戦えるだろうし、逆に彼等を取り込めるだろう。

3. いたずらに変革しない入り込み方と、勝ちが勝ちを呼ぶ構造

学習を続けて熟達するためには、学習のモチベーションを維持することがベースで必要になる。そのためには、学習に対する報酬と機会の両方が必要だ。長いプラトーを乗り越えて、学習し続けるためにも、1つの機会を解決すると次の機会が出てきて徐々に課題解決の機会・情報が自然と集まってくるような、ポジションの希少さと社会から期待のバランスがとれた場所を選ぶことが望ましい。
得てして最初は、課題があると言っても、既存のステークホルダー的には個別最適化された構造があるだけなので、すぐには受入れてくれないし、場合によっては抵抗を受けてしまう。そのため、いたずらに変革の必要性を叫ばずに、既存のステークホルダーを尊重して、課題解決の信頼を積み重ねていこう。その態様とポジションの希少さ、社会からの期待が組み合わさると、勝ち(≒課題解決、事業化)が次なる勝ち(≒課題解決の新たな機会)を呼ぶ構造に入れるはずだ。

2-2:PBFアプローチの特徴

ここまでPBFの定義を見てきたが、このアプローチが自らの志向性に合っているのか?疑問に思う読者もいることだろう。
ここからは、PBFアプローチで産業創造に取り組んでいくことがどんな起業家と相性がいいのか?企業成長のステップも踏まえながら見ていく。ぜひ引き続き建設的な批判精神で読んでいただきたい。

2-2-1:PBFと相性の良いベンチャー立ち上げルート / 各種アプローチの比較

勿論だが、ビジネスに唯一絶対解などあり得ない。多数のアプローチがあってそれぞれに長所・短所がある。見定める環境や、起業家の自我、目指す時間軸、持っている資産等によって望ましいアプローチは変わる。しかし、こと最近日本でベンチャーをやろうと考えると、プロダクトを開発しVCファイナンスをテコに成長させるスタートアップ(短期的に急成長を目指すベンチャー企業の形態)を選択することが多いのではないか。よく誤解されるがReapraはこのアプローチを否定したい訳ではない。成功した企業も多数あるし相性が良いパターンも沢山あるだろう。ただ長所・短所を理解した上で選択し、それぞれの良い所を組み合わせて自分なり・自社なりの望ましいベンチャーアプローチを開発してほしい。
特徴を比べて理解しやすくするために、便宜的ではあるが、6種類にベンチャー立ち上げのアプローチを整理してみた。

  1. ブティック型
  2. 特定技術・知財活用型
  3. プロダクトグロース型(スタートアッププロジェクト型)
  4. スタジオ・カーブアウト型
  5. 長期持続的な熟達型
  6. ソーシャルベンチャー型

※第1版発行の後で、一覧表を挿絵として挿入予定

  1. 長期持続的な熟達型が、PBFにおいて特に有用なアプローチだと考えている。なぜこのような領域が望ましいのか、諸類型を頭に入れた上で1つずつ見ていきたい。

長期持続的な熟達型

Reapraのアプローチである。以下のようなステップbyステップでマーケットリーダーの創出を目指す。重要なのは、段階的に上がっていく起業家自身の学習レベルに合わせて、事業環境や事業ステージを拡大していくことである。また最も重要なポイントは、参入事業立上げから、高利益体質オペレーション構築までを起業家自身が体現すること。その上で経験知を体系化し第2、第3の起業家的人材を生み出していくことだ。領域の複雑な要素をインサイトとして取り込みながら徐々に多角的に事業ポートフォリオを形成していく企業を作り、またそれにより起業家的人材が育成されていく。PBFは長期視点の事業活動の試行錯誤の中で、徐々に解像度を上げていくことが重要なため、そんな構造を01から企図して作っていく本アプローチが有用だと考えている。

※第1版発行の後で挿絵は修正予定(内容を一部改訂予定)

なおReapraでは参入事業として「陳腐なビジネスモデル」の選択を推奨している。
詳しい定義は後述するが、ピッチされたとしても新規性を感じず、陳腐に感じるビジネスのことだ。既に先行する企業がおり、顧客価値があり、既に儲かることは一定証明済み。なんのイノベーション要素も感じないようなビジネスだ。けしてアナログだとか、オペレーションが簡単だとかではないので、字面だけで誤解しないでいただきたい。

VS 1.ブティック型

昨今だとコンサルティング会社出身者やWebマーケの広告運用代行など、個人のスキルベースに独立しやすい業態で作られることが多い。かつて渋谷ビッドバレーなどが流行っていた時代のホームページ作成代行も入るだろう。ある種陳腐なビジネスも作れて良さそうに見えるかもしれない。しかし労働集約的で属人的なスキルに依存する事業であることが多く、どうしても採用目線が上がりやすく、組織拡大が難しいことが多い。勿論このような立ち上がり方で上場しているベンチャー企業も多数あり、ベンチャー立ち上げアプローチとしては有効ではある。もっとも、既に成立している事業会社からある種同じビジネスモデルで独立していくため、領域が混み合いやすかったり、既に一定大きい市場で勝負した方が利益を確保しやすいため、CFの立ちやすさは良いものの、PBFとの相性はそこまで良くない。

VS 2. 特定技術・知財活用型

強い知財を持っていればぜひチャレンジしてみたい所だが、どうしても技術や知財を活用できる事業を考えてしまうため、企業成長の登り方が一定縛られる。複雑性を取り込み、徐々に領域の解像度を上げながら大きくなっていく、PBFに合致する戦略とは「周囲の戦略にキャッチアップしながら決めていく。自社の登り方を敢えて決めないこと」のため、こちらも必ずしも相性がよくはない。もっとも当初から技術をフル活用した事業に固執せず、既に成立している陳腐なビジネスモデルと少しずつ組み合わせていく等して、両方の良い所を活かしたやり方にトライしていきたい。

VS 3.プロダクトグロース型

長期視点のPBFを選びつつ、プロダクト仮説があるため、それに大きくVCファイナンスを繰り返してやっていきたい、という相談を受けることが多い。しかし両者はあまり相性がよくない。そもそも長期熟達アプローチは、長期的に結実すればポテンシャルが大きな市場だが、足下では部分最適化された市場やまだ市場が存在していない(βないしΩ)だと見たてているため、初期にプロダクト仮説があったとしても、それを評価されると起業家自身が信じているポテンシャル対比でどうしても相対的に低い価値がついてしまう。また繰り返し論じてきたが、プロダクトに投資を繰り返しながら、早く市場をとる必要があるアプローチのため、基本的には大きく赤字を出しながら(投資しながら)、キャッシュバーン仕切る前に次の外部資金調達を実現するまで走り切る。そんなスプリントレースを繰り返していく経営の仕方になる。しかし、PBFにおいては、大きく資本を投下したとしても事業機会1つ1つは必ずしも大きくないため、必然的に事業機会の探索範囲が拡がり、分散投資を各所にしていくため組織が大型化し資金燃焼しやすい傾向がある。故に特に初期にVCファイナンスを起点にしたプロダクトグロース型を選択してしまうと、PBFにおける試行錯誤のそれと相性が悪い。
言うなれば、世の中に出したいプロダクトや仮説があり、それを起業して実現したいと強く願う起業家はプロダクトグロース型と相性が良い。対してPBFにおいては全体最適化や大きな市場形成への登り方を最初に決め込めないため、プロダクトや事業仮説そのものへの拘りよりも、様々な事業を生み出して成長し続ける組織・経営システムを作っていくことを願う起業家と相性が良い。プロダクトの成長のために組織を作るのか、強い組織を作りながらプロダクトを増やしていくのか、その主従の捉え方が異なることを選択の参考にしていただきたい。

VS 4. スタジオ・カーブアウト型

立上げ当初から一定資産があり規模になっていることが多く、切り出し元会社の事業に依存する。日本市場では、まだまだ大手企業の中に優秀な人材が多いため、この組み合わせには挑戦していきたいが、事業会社が予算をつける際に足下で小さい市場を敢えて選定する有効性は低く、目下の相性はあまりよくない。当初から長期持続的な熟達型を想定して切り出していくことが、切り出し元会社にとっても有用であることを試行錯誤から証明していきたい。

VS 6. ソーシャルベンチャー型

サービスの受益者と顧客が合致しないためビジネスモデルが複雑になりやすい。社会課題の解決という意味では相性が良さそうに見えるが、あくまで現在のReapraは、株式会社アプローチが有効な領域で試行錯誤してきたため、現状はまだ研究と実践を進めるフィールドとしていない。しかし次世代に跨る社会の課題をテーマにした際に、非営利や社会起業的なアプローチの特性を活かすことで得られる果実も多いと思われる。今後トライしていきたい。

繰返しにはなるが、あくまで特徴を比べて理解しやすくするために便宜的にベンチャー立ち上げのアプローチを整理してみただけである。改めて強調したいのは、それぞれに良さがあるため、単一のアプローチと決め込まず、それを組み合わせて自分なり・自社なりの望ましいベンチャーアプローチを開発していってほしい。Reapraも現在は上記で触れたアプローチが有効だと仮説立てているが、研究・実践を続けた先に、徐々に変わっていくことだろう。

シリアルアントレプレナー(熟達した連続起業家)による01の場合

すでに一度経営あるいは当該事業領域に熟達している起業家(シリアルアントレプレナー)がPBFを目指して新規創業する場合には異なるアプローチが考えられる。領域の解像度が高く、超過収益を生み出すオペレーション構築能力が高い場合、敢えて陳腐なものを選ばず、一定程度プロダクトグロース型の事業から参入し、既に見えている構造をいち早くとっていくアプローチも考えられる。
もっとも過去の成功から強化学習されたアプローチの再現ができるとは限らないため、その選定は慎重にしていく必要がある。

2-2-2:PBFアプローチが有効な背景環境の理解

ReapraがPBFアプローチにたどり着いた背景に、日本やアジアというメインで取り組んでいる市場環境がある。 特に日本でビジネスを行う際、一定内需が大きい市場のため、日本語圏での展開を前提に事業を構想する。日本で成長し次なる市場として国外を目指したい。しかし欧米のスタートアップは対比して巨大な英語圏のマーケットに直接接続する。資本市場から日本での調達と比較にならない巨額のファイナンスを繰り返し、大きくマーケティングや組織に投資してくる。今後トライしていきたいとは考えているものの、VCファイナンスを前提にプロダクトに投資していくアプローチでは、グローバル市場で勝負していくことは簡単ではないだろう。特にコンシューマー向けのプラットフォーム型ビジネスでは、資本体力がものを言うため難易度が高い。そのため、日本からエントリし、東南アジア全域を対象マーケットにして長い時間軸で産業を作る会社を創造するためには、欧米の会社が得意なアプローチとは異なるそれを試行錯誤する必要があると考えている。

また、昨今あらゆる所で言われているが、社会の変化速度が速く、未来の不確実性が増しているとされている。1つのプロダクトに依拠して企業成長を作ろうとしても、想定していない範囲から市場の地殻変動が起きてしまい成長できなくなるリスクが高いと考えている。一方で、そもそも変化することを前提に、01のタイミングから複数事業のポートフォリオを構築していったらどうだろうか?変化していく市場を前に、プロダクトのライフサイクルが尽きたらたとえ創業事業や元々の主要事業であっても捨てて、次の事業に再投資し続けて、変わり続ける会社であれば、不確実な現代社会においてもその変化を乗りこなしやすいだろう。もし、そのようなアプローチで長期持続的に成長する企業を再現性高く作ることができたとしたら、結果的に社会に呈示できる価値の総量が大きくなるのではないか。そういった世界観にチャレンジしていきたい。

2-2-3:PBFアプローチと相性が良い起業家の人材像

既に述べた部分もあるが、どんな志向性を持った起業家と相性がいいのだろうか?
社会と共創する熟達というアプローチを志向する方々とReapraは共創していきたい。その意義や概要は既に述べた通りだ。
第1章 参照。

あくまでPBFアプローチとの相性の良さ、そして社会と共創するマスタリーの入口への立ちやすさという観点で、下記の特徴を見ている

  1. 独自性の強い価値観、観点で社会を捉えていること
  2. 不確実な状況で経験学習を積む態様との相性の良さ / エフェクチュエーションの志向性を持つこと
  3. メタマルチな思考力 / 物事の背景にある構造を観にいける力を持つこと
  4. 自己批判的に内省を活用でき、自己変容にオープンであること

2-3:どのようにPBFを導き出すか?

Reapraの考えるPBFは、それ単体で存在し、客観的に定義できる事業領域ではない。起業家が独自の視点で切り出した事業領域であり、FDを通して自らの内面に問い合わせる活動と不可分である。そのため、ある事業領域は「この起業家にとってはPBFであるが、あの起業家にとってはPBFではない」ということもありえる。PBFをどのように導き出すのか、ステップを確認しよう。
概要としては、まず自らのライフミッションを言語化し、並行して複雑性が高く長期的な学習が可能な場所を選定する。そして、それらを統合して、PBFとして言語化し、自分が本当に長期的にコミットできるのかを確認する。 その後、PBFを構造理解し、何がわかっていて何がわかっていないかを整理し、そこに至る複数の道筋を設定し、差し当たってのEntryBizを選ぶ。

2-3-1:ステップ1 自らのライフミッションの言語化

自分にとってのPBFを考えるにあたり、いきなり市場調査を行う訳ではない。まずはIFD(別章参照)に取り組み、自らのライフミッションを言語化する。 IFDを通して起業家自身が何を目指しているのか、社会変化を洞察する際に無意識的に前提に置いているものはないか?現時点で追い続けたいと発言しているミッションの言葉は本心からそう信じられているか?緩い定義で使っている言葉はないか?等を明らかにしていく。領域を調査した際にどんなバイアスを通して世の中を見ているのかを理解しておいた方が、結果的にフラットに領域の可能性を評価できる。

2-3-2:ステップ2 複雑性が高く、長期的な学習が可能な場所の選定

PBFアプローチは、長期的な学習が可能という意味で、将来延び行くが複雑性が故に小さい市場で、かつ混みあっていない領域との相性が良い。
ステップ2として、IFDと並行して、複雑性が高く、長期的な学習が可能な場所を選定する。この際、過去の経験から詳しい領域を選ぶのではなく、客観的にみて複雑性が高い場所を、ロングリストから選定することを推奨している。 なぜ、詳しい領域ではなく、ロングリストから選定するのだろうか?それは、起業家候補が思いつきやすい領域は他の起業家も発想しやすく、混み合っていることが多いからだ。
考えてみて欲しい。一般的に起業を考えた際にまずどこから考えるだろうか?多くの場合、自分の身の回りの困りごとや課題だと感じるもの、これまで何かしらの接点で見聞きしてきた社会課題を元に考える。また、これまで関わってきた領域における課題を棚下したり、人によっては先行して成長しているベンチャー企業を調べて参考にならないか調べるだろう。これらのアプローチをとると、特殊なキャリアを持った起業家でもない限り、概ね変革志向でベンチャーを志す優秀な若者も類似市場を想起しやすく、どうしても混みあっているところが目についてしまう。
レッドオーシャンに後発として突っ込んでしまうことを避けるため、敢えて、これまでの経験や詳しい業界ではなく、フラットにPBFアプローチと相性の良い領域を検討する。国内に存在する1,000を超える市場のロングリストを市場規模や中小事業者の数など、複雑性が高い市場の特徴が表れやすい複数の指標をもとに評価を行い、起業領域をその特徴だけを頼りにトップダウンに選定することを試みる。

もちろん、詳しくもない業界で起業なんてできるのか?と素朴に思う方もいるだろう。その懸念はある意味正しく、Entry Businessから強いインサイトがあるビジネスモデルを想起することはできないだろう。しかし、ReapraのPBFアプローチにおいては、Entry Businessでは既にニーズや手法が証明されていて模倣が比較的容易な陳腐なビジネスから始めて学習を繰り返し、市場インサイトを貯める。そして、2nd BizDev以降で市場インサイトに基づくクリエイティブなビジネスモデルを実装するアプローチを取る。EntryBusinessではオペレーション力の強化と市場インサイトの蓄積にフォーカスする長期アプローチだからこそ、このような門外漢の領域を探していくことが有効なのだ。

2-3-3:ステップ3 ライフミッションとフラットに探索した領域仮説の統合。時間軸の挿入

ステップ2を経て、いくつかの領域候補を客観的に選定した後は、ステップ1で定義したライフミッションとの重なりを見ていく。
長期的に学習し続けることが重要になるPBFアプローチでは、起業家が強い好奇心を持って当該領域の構造を捉えにいくことが必要だ。そのため市場の特徴だけでフラットに検討した領域仮説に対して、今度は主観で持って長期的にコミットし続けられるものに絞り込んでいく。
自身がコミットし続けられそうな複雑な領域をある程度絞り込めた段階で、領域の未来像へと検討を広げていく。当該領域が次世代に渡ってどのように変化を遂げていくのかを自身の見立てと、社会変化予測を元に検討し、領域の見立てに時間軸を追加していく。

2-3-4:ステップ4 PBFの言語化

ステップ3を通して、複雑性が高く、競合が少なく、かつ自分が長期的にコミットしつづけられそうな領域について、どのような未来を求めるのかイメージが湧いたと思う。ステップ4では、時間軸とともに変わっていく未来予想図の中で、誰(顧客層)に何(価値)を提供しつづけるのか、自分なりの表現で言語化する。
その際に、抽象的で定義の範囲が広い言葉をできるだけ使わず、かりに抽象的な言葉を入れた場合にはその意味を背景理解のない第三者に説明できるレベルに定義を深ぼることが重要になる。例えば「ヘルスケア」や「予防」のような一般的な用語で安易にまとめず、自分なりの造語や複数の言葉を組み合わせた文章で独自の世界観としてアウトプットしてほしい。

2-3-5:ステップ5 アップデートし続ける前提での 見えている / 見えていない部分の可視化

PBFでは必ずしも将来像は不明瞭だ。自分なりの観点をできるだけ言語化できていたとしても、全てを見通すことは不可能だし、逆に見通せる気がする場合には他者も同様のため、混みあったり、資本のあるプレイヤーが入ってきやすい。そのためむしろ不明瞭の方が良いのだ。
事業の進捗に応じて、最初は見えなかった市場の構造が徐々に見えてくる。そのため最初から高い精度を求めてPBFの要素を見にいこうとせず、今後も定期的に解像度を上げていくという前提に立ち、曖昧な状況を受容してほしい。事業活動を通して、構造理解をアップデートさせることを考えると重要なのはむしろ「現時点で見えてない部分」を明らかにすることだ。今後の事業活動で想起する施策の中で、見えていない部分の情報を獲得しにいくことができるからだ。

2-4:PBFを構造整理

2-4-1:領域構造理解の目的

2-3のプロセスを通して言語化し、定義したPBFについて、構造理解を深めていく。PBFでは、「複雑性からまだ小さいが将来大きくなる」はずだが、現在その市場が大きくなるのを阻んでいる理由・複雑性の内容を明確化する。
足元のEntryBizレイヤーでだけ考えるのではなく、それを包括する産業領域全体のバリューチェーンの視点で考えることによって領域の構造変化に、より早くよりよく対応できるようになる。このため、最終的には、産業領域全体について、自分なりのあるべきバリューチェーンの姿を明確にすることを目指したい。
もちろん、複雑性が高い市場の定義上、参入前の時点では産業構造が見えにくく、EntryBizでのオペレーションを通して解像度をあげていくのが本質である。そのため、参入時点の段階では、何が見えていて何が見えていないのかを整理し、EntryBizを通じて明らかにすべき業界インサイトを明確にすることが目標となる。別の言い方をすると「自分が見えていないことを見えている」ことが重要なのだ。

2-4-2:構造整理のステップ

前項で述べたとおり、最終的な目的は、「PBF全体について、自分なりのあるべきバリューチェンの姿を明確にすること」である。しかし、一足飛びに夢想しても仕方がない。まずは、領域のサブセグメント、ステークホルダー、バリューチェーン構造の現状を整理するところから始めよう。なお、バリューチェーン構造を整理する際、EntryBizのバリューチェーンではなく、PBF全体のバリューチェーンを整理することに注意しよう。

2-4-2-1:サブセグメントへの切り出し

領域構造を理解するにあたり、まず領域の中に、どのようなサブセグメントやステークホルダーがいるのか整理する必要がある。たとえば、水産業の中には、①輸入、②鮮魚流通、③養殖、④水産加工の4セグメントがある。各セグメントの相対的な大きさはどうか、拡大しているのか縮小しているのか、ドミナントなのかフラグメントなのか、あるセグメントが他のセグメントを統合する、などがあり得るのか、を確認する。

2-4-2-1-1曼荼羅チャート

また、一つの方法として、曼荼羅のように含まれる要素、関連しそうなテーマを書き出すというアプローチがある。PBFの構成要素を洗い出し、各要素の関連性の強さを図示する方法である。自分たちにとって、身近なところから理解し始め、そこからさらに派生していくというように段階的にPBFを捉えることができるものとして有用であると考えている。SMSの決算資料が参考になる。

参考:SMS決算資料 p9

2-4-2-1-2現在のバリューチェーン構造の整理

また、バリューチェーンを分析し、仮説立てることもサブセグメントの理解を深める1つの方法である。PBFを既存の市場や構造に落としたときに、関連するプレイヤーを整理し、どこにお金が集中しているのか、どこが付加価値の源泉なのかについて考察する。情報を付与するなど、価値の付加がどのような段階をへてユーザーに届けられるかを、なるべく広い範囲で見渡して、それをバリューチェーンの形に落とすということを試みる。バリューチェーン構造を整理するにあたっては、以下のような視点で整理することが有用である。

① バリューチェーンプロセスの大小評価

• 大きなコストファクターは何か
• バリューチェーン全体の中で、統合不能なプロセス、回避できないプロセスはどこか
• 価格決定権を握っているプロセスはどこか。
例えば、寝具マーケットでは、マットレスの優劣に科学的根拠はなく、各社が独自の指標で自社製品の優位性を主張している。このため、マーケティングコストをかけることで市場シェアが決まっている。寝具マーケットの場合、マーケティングプロセスが重要なバリューチェーンプロセスだと言える。同じように、このような分析を通して、以下のようなことを理解していくことができる。
• 理想的なバリューチェーンになり得ていない理由
• より複雑性が高い商流がある箇所
• ノックアウトファクターとして価格決定力を持つプレイヤーの存在

② 競合の状況

• 直接競合:バリューチェーンの同じプロセスにいる競合
• 間接競合:現在は、顧客やサプライヤーだが、バリューチェーンの別プロセスから垂直統合を狙ってくる可能性がある競合
• 新規参入:現在バリューチェーン上には居ないが、顧客データを持っている会社が参入。GoogleやRecruit)
• 代替品:プロセスそのものがなくなる
注意する点としては、一番最初にGoogle検索してバリューチェーンの既存分析を探しに行くのは良いが、それをそのままアウトプットにしないことである。一連の流れを作ったら自分なりに詳細化して、オリジナルのバリューチェーンに仕立てるのが重要である。それをしないと既存プレイヤーが見ている市場構造と同じ視点になってしまい、大した発見も無ければチェーンのひずみに気くことはできない。なにかを発見するためには、今までにない切り方・既存プレイヤーが見ていない見方で切っていくことが望ましい。

2-4-2-1-3 バリューチェーンを動的に捉える

現在のバリューチェーンを整理することは、現時点の領域の構造を理解することであるが、その構造は永続するわけではない。次のステップとして動的にバリューチェーンを捉える必要がある。動的なバリューチェーンとは、5年先10年先と長期の時間軸で社会が変わっていくと、この領域のバリューチェーンにおけるどこかのステップが統合されたり無くされたり、テクノロジーの変化によって効率化されることが起きて未来のバリューチェーンがどう変化していくのか、ということを折り込んで考えることである。将来的にテクノロジーや強いプレイヤーによって無くされない場所でビジネスを行うことが必要になってくる。 バリューチェーンを動的に考える上で、PESTや5 Forces, プロダクトライフサイクルなどのフレームワークも有効である。

PEST分析

P(政治)E(経済、競合環境)S(社会要請、社会構造)T(技術要素)分析
社会構造、働き方が変わるなど卑近なものから社会や政治(各国のパワーバランス、国の要請)まで、抽象と具体をどれだけ往復的に広げられるかが重要。自社と関係なく社会がどう変わるかをリストアップし、そこから自分たちの業界に関係あるのはどこなのかという観点で影響を見ていく。加えてPEST的に見れば、地政学的な要素も加わる。こうした思考の過程でノックアウトファクターも見えてくるのではないか。

5Forces

ポーターの5forcesも広い視野を持つことに役立つ。 鉄道会社のマーケティングの失敗例。鉄道会社が自分たちの市場を、いかに鉄道を円滑に運営するかとして見た。航空や自動車のある中で自分たちのバリューを輸送と捉えなかったことにより、かなり矮小な部分で戦うことになった。つまり代替手段や新規参入の視点が抜けていて、自分たちの事業ドメインが矮小化されていた。 プロダクトライフサイクル プロダクトにはライフサイクルがあり、創業期から成熟期における各フェーズの中でどのように伸ばしていくのかという観点に立って、時間軸を意識して戦略を立てる必要がある。 この時間軸という視点が足りないがゆえに、業界構造を適切に理解しきれずに起業してしまい失敗するケースも多い。PPMとプロダクトライフサイクルにおける部分的なフェーズしか捉えられていないとも言い換えられる。プロダクトの導入期に勝てたからといって、成熟期においても必ずしも勝てるとは限らない。

ケース

ネット生命保険の例 ネット生命保険は従来の保険業界の課題に合わせたプロダクトであった。しかし初期のアーリーアダプターを取り入れた後は顧客接点をどのように取るのかという課題に直面している。そのため広告をたくさん打つことで顧客接点を作り出そうとしているものの、インターネットを利用した保険の契約自体は他社も真似できるものであり参入障壁を気付くためには他の事業と連携して面で押さえることが必要になっている。これはプロダクトライフサイクル上の最初の入り方だけを捉え、プロダクトの成熟期にどのようなプレイヤーが勝つのかという視点を持てていなかったために起こった。領域構造の負を破壊するところまでは見えても、シェアを伸ばしていかに投資するかが見えていなかった。長期の時間軸を踏まえた戦略を立てないとそのプロダクトが成熟期に入ってより伸ばそうとすると、壁にぶつかって業界の上位ランカーに食い込めるほどにはならなくなってしまう。これがプロダクトの導入期に勝てたとしても成熟期に勝てるとは限らないということである。プロダクトライフサイクルによってKFSをイメージしながらその時の戦い方をイメージして戦略と時間軸の関係を意識することが大切である。

2-4-2-1-3競合の戦略(憑依して考える)

一般的に競合といった時にお客さんが一緒で今明らかに競合している直接競合の会社を指すことが多いが、自分たちがPBFのような概念を見ている時に直接競合だけを見ているとノックアウトファクターを見失う。むしろ、自分たちが想定するPBFという範囲で考えた際の潜在的な競合をみていくことが重要である。 エス・エム・エスの例では、"介護・看護・アクティブシニアの3つのマーケットに対して情報インフラを作る”、"高齢社会におけるインフラマーケットを作ってマーケットリーダーになる"と言っていて、最大の競合は "強いて言えば" Googleであると考えていた。もちろんサービス単位でいうと介護のキャリアサービスや人材紹介はあるが、自分たちが結実したいのは情報インフラマーケットであるという観点から見て、それらは競合としてみていなかった。 もし仮に介護の人材紹介の動向をチェックばかりだけをしていて、Googleが突然”高齢者の生活に対するECを作ります!”と言い出したら想定外の競合となってしまっていただろう。このようなことを回避するために考えを広げて競合を考える必要がある。しかしながら、ノックアウトファクターを理解しようとしたときにネットリサーチをして”この企業は自分たちがやろうとしている市場における先行企業だからノックアウトファクターになるのかどうか”を妄想してもしかたがない。
重要なのは競合になりそうな会社がどんな戦略で参入して来る可能性があるのかをシミュレーションすることである。そしてそのシミュレーションをするためにはもし自分がその会社の経営者であったらどうかや、どれくらい投資余力があるのか、その会社のドメインから自分がやっている領域に入ってくるとするとどういう展開になり得るのか。ということを、相手の立場になりきって(憑依)考える必要がある。例えばヘルスケア事業をやろうとしている時に"Googleが来るかもしれない"と漠然とおびえていても意味がない。そうではなく、Googleがどんな参入戦略を立てているかを、自分がGoogleのCEOだったら、もしくはGoogle Japanのヘッドだったとしたら参入してくるだろうかということを憑依して考えなくてはならない。また、リクルートが入ってくるのかもしれないと思うのであれば、リクルートの社内起業制度や、新規事業の投資基準をリクルートの役員やリクルート社の知り合いから手に入れた情報をもとに(当然その情報が不完全なものであるという前提で)仮説を当ててみて、どのくらいの市場規模であれば参入してくるのかという仮説を立ててみる。このように、相手の力学や背景を理解して、彼らの参入戦略のシミュレーションまで考えないとノックアウトファクターを考える上では不十分である。

2-4-3 自分なりのあるべきバリューチェーンを考える

2-4のプロセスを通して、現在のバリューチェーンを俯瞰し、時間軸でどのようにバリューチェーンが変化していき、そこにいる直接・間接の競合がどのような世界観で、どのような戦略をもって参入してこようとするかを考えた。 その上で、自分達なりに、どのようなバリューチェーンになると自社にとって、最も都合が良いかを考えたい。そして、そのようなバリューチェーンになった際、どのようなポジション・戦い方ができると良いだろうか。 具体的に考えていくと、先に上流工程を抑えていくことで、下流工程が主戦場になった際に有利にたたかえるから、まずは上流を押さえるところから入っていこうとか、参入障壁としてXXがあるとGoogleは入ってこれないから、XXを埋め込んでおくべきとか、このタイミングまではこの競合と戦っても勝てないから、提携先として手を握っておこうとか、登り方のオプションが見えてくるはずだ。
2-4を通して業界構造の解像度を高めることで、具体的な登り方のオプションが見えるようになること、これが重要だ。そして、解像度が十分に高まっていれば、登り方のオプションは、1つではなく複数見つかるはずだ。業界構造全てについて解像度が十分あれば、無数のオプションが見えてくるだろう。一方、登り方のオプションが見えてこない場所は、業界構造理解が不十分な場所である。
誤解しないでいただきたいことは、この段階で業界構造理解が十分になるまでEntry Businessを始めるな、と言っているのではないことだ。PBFの性質上、実際にEntry Businessを始めてみるまで、業界構造は十分に見えてこないはずなのだ。この段階で、業界構造がクリアに見えるのだとすると、その業界がPBFでない単純な領域であるか、自分自身の理解が浅いまま、わかった気になっていることを示唆している。 必要なことは、自分がこの業界の何をわかっていて、何をわかっていないのか、それを解るためにはどのような活動を通してどのような情報を明らかにしなければならないのかを理解しておくことだ。「自分が何を見えていないかを見えている」のだ。

2-5:Entry Business

2-5-1 PBFの構造理解とエントリーポイントのつながり

2-4-3で、ある程度の業界構造理解があれば、登り方のオプションが複数見えてくると言った。Entry Businessでは、複数のオプションの中から、「もっとも陳腐で新規性のないビジネスモデルで、やりこめば確実に利益がでるもの」2−3個を選んで試してみる。
あるべき姿としては、EntryBizを1つだけ決め込んでその延長線上にPBFを考えるのではなく、PBFから複数の登り方を考える。また、PBFから複数の登り方を考えたあと、1つだけを選んで、それだけに固執するのでもない。 「やりこめば確実に利益が出るもの」とは言うものの、参入前には見えていなかった要因によって1つ目の登り方がうまくいかない場合もあるだろう。1つ目の登り方がうまくいかなければ、2つ目、3つ目の登り方を試して、結果的にうまくいくものを選べば良い。
なお、Entry Businessで新規性のあるビジネスモデルを選ぶべきではない。Reapraのこれまでの経験から、いくら有望なビジネスモデルであっても、それを実行するオペレーション力が弱ければ利益化できないケースを見てきた。また、有望なビジネスモデルと見るや、資金力のあるプレイヤーがコピーキャットとして参入し、捲ってしまうケースも見てきた。資金力のあるプレイヤーがコピーキャットとして入ってきても蹴散らせるだけの高いオペレーション力を先につけておくことが重要なのだ。
先に高いオペレーション力がついていれば、FirstBizでCFも貯められるし、業界の知見も格段に広がっているはずだ。参入前のビジネスアイデアをその知見に照らして検証し、高いオペレーション力で学習サイクルを回せる段階になってから、2nd BizDevとして新規性のあるビジネスモデルにチャレンジしたとしても、結果的にはそちらのほうが近道になるはずだ。

2-5-2 Entry Businessの目的

エントリービジネスの目的は、筋の良いビジネスモデルでCF+を目指したり、スケールすることではない。前述したとおり、たとえ筋の良いビジネスモデルがあったとしても、オペレーション力が弱ければ、競合にまくられたり、価格競争で疲弊してしまう。そうではなく、組織として強いオペレーション力を担保して、2nd BizDev以降に筋の良いビジネスモデルが見つかった時に、高いオペレーション力でビジネスモデルを実行できるよう、組織の足腰を鍛えることを最優先課題とする。 そんな背景で、ReapraではEntry Businessの目的を以下の4つと定めている。
• ベースキャッシュフローを作る
• ビジネスインサイトを貯める
• 強いオペレーション・SOカルチャーを作る
• セカンドプロダクトを開発するCFを貯める

陳腐なビジネスでベースキャッシュフローが回っていれば、たとえ大きく売上利益が跳ねなくても、死ぬことはない。まずは、キャッシュを燃やしてタイムアタックをしている状態を脱し、事業を通じてCF+になる状態を目指す。
ベースキャッシュフローを回す中で、日々の経験学習において、アクションに対する反応から、顧客ニーズの解像度を上げたり、競合の戦略見えているもの・見えていないものを整理したり、業界構造の歪みに気付いたりできる。それが、ビジネスインサイトを貯めるということだ。
経験学習を最大化しようとすると、単に業界インサイトを貯めるだけでなく、業界インサイトを最大化したり、それを売上・利益に効率的に転換したりすることも必要である。また、CEOが自分一人でできるだけでなく、業界インサイトを獲得したり、それらを売上・利益に転換することを組織スキルにまで高める必要がある。
上記3つを実現していく中で、前述のベースキャッシュフローは大きくなり、2nd BizDevの開発資金として溜まっていく。 一定の投資が必要なBizDevであれば、1st BizDevからのCFを開発資金として2nd BizDevで進めていく方が、業界インサイトも組織オペレーションもない中、キャッシュバーンアウトを気にしながら進めていくよりも良いはずだ。

2-5-3 Entry Businessのゴール

上記の4つの目的を達成するため、Reapraでは、「競合よりも圧倒的に高い利益率を実現すること」をゴールと置いている。 競合よりも圧倒的に高い利益率を達成するには、深いマーケット理解(インサイト)と、それらを複雑性高くマネージするオペレーション力(コスト管理・収益最大化の力)が必要になるため、それが達成できていること=4つの目的が達成されている状態だ、と捉えている。

2-5-4 Entry Businessの条件

前述したとおり、エントリービジネスでは強いオペレーション力の獲得にフォーカスする。そのため、ビジネスモデルの妥当性を検証が必要な「新規性の高いビジネスモデル」は置いておき、「陳腐なビジネスモデル」をコピーして参入することを是としている。ここでいう「陳腐なビジネスモデル」とは、すでに競合がおり、市場の存在とビジネスモデルの有効性が認められているモデルのことである。
「強い競合がいない」というのも、エントリービジネスの重要な要件である。「陳腐なビジネスモデル」の定義からすると競合が全くいないのは問題だが、リクルートのようなオペレーション力が高い競合がいると、強いオペレーション力で勝つを実現できない。「競合はいるが、ぬるい競合しかいないので、OPSをしっかり作り込めば勝てる」というのが、エントリービジネスの要件となる。
その他の用件として、スケーラビリティがある、というのも重要だ。コンサルティングは、ビジネスインサイトも溜まり、CFインパクトも良いが、作業が属人的で、他者に渡しにくい。このため、本人の時間工数がボトルネックとなり、スケールしなくなってしまう。
経験学習サイクルが小さく早く回ることも重要だ。大型不動産売買のように、年に数回しかトランズアクションがないビジネスだと、トランズアクションの成功・失敗というフィードバックから学ぶスピードが遅くなってしまう。経験学習サイクルによる学習の最大化すること競争力とするのであれば、取引が高頻度・ショートターで行われるビジネスを選ぶべきだ。
また、エントリービジネスは、アセットライトに事業を行うべきである。EntryBizは、PBFに至るための複数の道筋のひとつでしかなく、決め込まずに色々試すべき。選んだエントリービジネスが上手くいかない時にPivotしやすいよう、アセットライトに再現することを心がける。どうしてもアセットが必要な場合でも、高価な工作機械をPay per useで使わせてもらうとか、他社と提携して役割分担するなどの方法を試すべきだ 以上をまとめると、エントリービジネスの条件は、以下のようにまとめられる。
• PBFの構造理解に照らして、PBFへの登り方のひとつであること
• 陳腐なビジネスモデルであること
• 強い競合がいないこと
• アセットライトであること
• スケーラビリティがあること
• 経験学習サイクルが早く回ること
• ピボットを前提とし、アセットライトに事業を行えること

参入事業における陥りやすい罠 / Q&A

◯参入事業の規模/伸びそうどうか?
◯先に規模を出してから、高利益を出していくのはだめか?
 売上拡大に必要なオペレーションと、利益拡大に必要なオペレーションが異なる。
◯試行錯誤の改善サイクルが長いもの
◯コンサル業務委託事業での参入 / スキル切り売り / インサイトがとれるという罠
 →組織に拡張できる、属人性を排除できる
◯資格取得や許認可が必要で、実現までに一定時間がかかるものの扱い
◯一定アセットが必要そうなものを参入事業としてどう扱うか
◯トランザクション単位での単価の問題 /粗利率の高さをどう見るか
◯参入事業から参入障壁が高いものを選ぶ必要はない
◯スケーラブルな事業モデル(Web完結型)は避けた方が良い / アナログ部分が残っており、作り込める
◯参入事業で間違えられない、何が参入事業なのか
◯プロダクトを決める過程ならば、まずはプロダクトを1つに決めるのが良い。ダメだったらピポット。複数のプロダクトで心変わりすると時間を浪費してしまう。


メールでのフィードバックは book-feedback@reapra.sg まで。

results matching ""

    No results matching ""