Reapra Book - 社会と共創する次世代起業家が産業創造するための学習ハンドブック version 1

リープラブック

本書の根幹にあるもの、本書を読むにあたってのガイダンス

本書の根幹には「社会と共創するマスタリー」という概念があり、その概念には、取り巻く現代、次世代の社会環境があり、それを見つめるそれぞれ個々人の自我があることを前提としている。 概念が想定している時間軸が現代から次世代までと長期であるため社会と自我は不可分と想定し、それをつなげて動的に考えること自体を大きな命題と捉えている。 言い換えると、起業家にはそこに動的な社会環境があること、起業家それぞれに自我がありそれをも動的に考えていく必要があるため、社会環境と自我の関係を切り離して本書を捉えるとその根幹である概念に触れることは難しく学びを減衰してしまう可能性があるかも知れない。 読者の皆さんにはその点を留意して読み進めていただくと幸いである。 また本書は既知の概念を活用しその上に構成されているものであるため、関連の強い領域に関しては参考図書も紹介しており、読む前、もしくは、読み進めながら関連書籍も併せて読むとより本書からの学習が効果的になるはずである。

本書は、Reapra、またReapraと一緒に「社会と共創するマスタリー」を共に学習し合う起業家達との現在進行形の対話を通して紡ぎ出され共著するという共同学習形態をとっており、この書自体を動的に捉えており、今後も動的に変化していく前提でのドラフトと考えている。 願わくば毎年1回は大きめの改訂を行い脈々と進化していければと考えている。 また、本書の一貫した内容の背景として「社会と共創するマスタリー」の概念があり、その概念は、工業社会以降の伝統的な教授型を中心とするいわゆる詰め込み型の学習は前提としておらず、強いて言うならば「学習の仕方を学習する」という点に重心を置いており、学習科学などを併せて学習していくとより効果的である。(参考図書紹介:学習科学ハンドブック)。

以上の大きく2点から、本書を読むにあたっては、起業家として成功するための答えを求めるのではなく、曖昧さの受容、長期時間軸、学習環境としての社会を包含し、「学習の仕方の学習」するものとして捉えていただきたい。

本書を活用してほしい方たち

本書は、世代を跨ぐような社会課題に対して長期的時間軸を想定して課題を解決していく起業家やそれを取り巻く共同学習者たちを想定している。その背景としては、現在において起業家が起業するフィールドにも色々な特性があるにもかかわらず、一括りに起業家の環境や特性を単純化し支援することに対する建設的批判精神がある。例えば、成功した起業家にも、失敗した起業家にも様々な背景があるにもかかわらず、起業家の成功物語や、ある特定の環境下での成功の型などがあたかも広く汎用的な法則のように流布されているのが現実ではないだろうか?その裏にはそれよりも多くの有意な確率での失敗物語があるかもしれないのに、である。新しいものを創り出すことでの成功を熱望する起業家や潜在起業家は藁をもすがる思いでそのようなノウハウ本やアドバイスを安易に模倣しすぎる面があるのではないではないか?著者自身を含め、我々が数多く接してきた起業家の多くがそういった傾向にあり、その多くは意図して学習する範囲を自己の囚われも含めた自我で起業環境を選択し、その中で日々の事業上の意識決定を繰り返し行っている。皮肉にも囚われを強化する学習を行っていたり、学習するべき環境に疑いを持たず、相関の薄い環境下での再現性が一定程度見られた事象を盲目的に学び実践にうまくつなげられていない、というサイクルを回し続けているケースが数多くあるように感じている。

成功や失敗の因果関係には複雑な多くの要素が絡まり合っており、その目的や意図、達成したい到達点の定義によって如何様にも判断が変わるものだと考える。本書は起業し成長していくという広大であるが故に複雑な領域を単純化することの危険性を認識した上であえて、「一定の環境下」、「ある特有の時間軸」、における「ある特定の目的に適応範囲」を絞ることで学習を促す一定のガイドとなることを目指している。

その範囲とは、学習領域は、「世代を跨ぐような社会課題」、時間軸は、「長期での時間軸(世代を跨ぐような時間軸を考慮した意思決定が必要な時間軸)」、目的は、「社会とのつながりを広く深くしていくスキル(社会と共創するマスタリー)の獲得」である。

その範囲で注意深く観察を行った結果から我々は以下の因果関係を仮説として導き出しており、それが本書の構成にも反映されている。

それは、「世代を跨ぐような社会課題」を、「長期での時間軸(世代を跨ぐような時間軸での意思決定が必要な時間軸)」で、「社会とのつながりを広く深くしていくスキル(社会と共創する熟達)の獲得」を目的としていく行為は、因子が大きく3つで構成されていて、「起業家の成したいことの未来を含めた事業環境特性」、「起業家のアイデンティティ(自我と囚われ)」、「その両者の組み合わせにおける作用」、に大別されるというものである。

その特有の範囲における事例を深く観察していくと、広く起業家全般に対して流布している方法論とは違った学習環境設計(領域選定)、方略(登り方)があると考えている。なぜならばこの範囲における起業家達が解決すべき課題は、安易な模倣に依ったり、短期間で解決するようなものではなく、不透明な中を試行錯誤しながら起業家本人による試行錯誤を通して課題領域の可視化を少しづつ進めていくことが求められる領域だからである。 トレンドをコピーし事業プランをつくったり、自我に囚われたままそれを強化するような向き合い方では、その範囲の広さ、時間軸に耐えられずいとも簡単に瓦解してしまうためだ。

本書は、世の中にはいろいろな起業領域、方略がある中で、「世代を跨ぐような大きな課題」を、「長期をかけて学習しながら解決をしていく想いがあり」、「長くて遠い道のりをに学習し続けていきたい人」に向けられたものである。


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